01 東京23区のホームセンター
ホームセンターに関するリサーチ。
東京23区のすべてのホームセンターを地図上にプロットした。(2020/05)





コラム:ホームセンターとブリコラージュ

フランスのホームセンターの看板には、よく「ブリコラージュ」と掲げてあるそうである。ブリコラージュとは、フランス語で「ありあわせの道具材料を用い、自分の手でものを作る」という意味である。また、「器用仕事」「日曜大工」と訳されることもあり、ホームセンターやDIYにはぴったりの言葉である。

この言葉を紹介したのが、フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースである。彼の著書『野生の思考(1962)』の巻頭では、バルザックのこのような言葉が引用されている。「自分のやる事をあらゆる角度から徹底的に研究するのは、野蛮人と農民と田舎者だけである。それゆえ、彼らが思考から事実に至るとき、その仕事は完全無欠である。」彼は、西欧主体の歴史から無視されてきたいわゆる「未開人」たちの暮らしについてフィールドワークを重ね、そこから着想を得た「構造」という概念を打ち出した。彼自身の定義によると、構造とは「変換を行っても不変の属性を示す諸要素と、その諸要素間の関係の総体」である。実は未開人たちは、徹底的に自分たちの周りの世界を観察することによって構造を発見し、それを変化させたり組み合わせたりすることによって文化を形成するという、極めて知的な行為を行ってきたのである。構造という感覚をうまく利用すると、別の時代に別のところで考え出されたものを、今考えていることのために再利用することができる。その実践がブリコラージュである。



レヴィ=ストロースはブリコラージュについて、その現代的な可能性を予言している。「電子計算機の発達によって情報の検索システムがおおいに発展することになるだろうが、そのとき野生の思考の法則が再び支配する情報の世界の発見が起こる。情報検索の専門家は、対象とする著作物の実質を否定したり議論したりはせずに、それを分析して構造を抽出する。」実際に私たちはグーグル検索を上手く利用し、手持ちの情報を分析したり組み合わせりしながら新しくつくりかえることによって物事を考えている。彼は進歩や発展といった前のめりの観念が幻想に過ぎないことを示し、構造という概念やそこから派生するブリコラージュを頼りに未来に進んでいけばよいと述べている。

ホームセンターもまた、ブリコラージュの現代的な可能性を秘めている。私たちがDIYをする時、高度な流通システムや寸法体系によって安価に供給される材料や道具に加え、バラエティ豊かに並ぶ日用品や植栽などの様々な商品の中から、本当に使えるのはどれかを見極め、それらを上手く組み合わせることで自分の住環境を新しくつくりかえる。また、最近のオンラインストアでは好みの商品を検索しながら比較することができるし、店によっては商品の使い方を動画で紹介している。ホームセンターでは、建築の素人が情報検索の専門家となって、まさにブリコラージュを行っているのである。

注:このリサーチは、中村が東工大塩崎研究室で行った研究を基にしている。