03 穴を開けてみる
机の天板や部屋の壁など、慣習的に一枚の面だと思っている境界に穴を開け、こちら側と向こう側のその間をデザインする。(2020/07)
机の天板
天板に穴を開けるのは、自分専用の机をつくる方法の一つです。一枚のフラットな天板に穴を開け、懐のある立体的な天板として捉えてみると、これはずっと机の上にあるけど邪魔だから専用の部屋をつくってあげようとか、これはこっちでよく使うからこっちから取り出せるようにしようとか、自分が何かものを置いたり取ったりという実は複雑な行為に対して天板の形を最適化することができます。つまり、上と下を隔てていただけの天板に穴を開け、境界に厚みを持たせることでより解像度の高い使い方を実現しているのです。


MISTLETOE OF TOKYO/DDAA(dskmtg.com)

テラスハウス: Boys & Girls in the City(netflix.com)

アカギ/福本伸行(フクモトプロダクション)

内藤家のダイニングテーブル/ゴーストファニチャー
床
このような考え方は建物のスケールでも使うことができます。例えば床に穴を開けてみると、下の階の天井との間に普段意識することのない小さな空間があることが分かります。つまり、床は上階と下階を隔てる一枚の面ではなく、元々厚みを持った境界なのです。その厚みの空間が新しい部屋や収納になるよう、床と天井にそれぞれ穴を開けてやれば、吹き抜けをつくる以上に丁寧で細かな階の繋がりを考えることができます。


床と天井/河内一泰(kkas.sakura.ne.jp)

リビングプール/増田信吾+大坪克亘(jp.toto.com)
壁
普段私たちが一口に壁と呼んでいるものは、構造体や断熱材、下地や仕上げといったレイヤーが重なってできています。つまり壁が隔てるこちら側と向こう側の間には、実はいくつかの小さな空間とそれを隔てるレイヤーが存在しています。それらの空間を拡大し、こちら側や向こう側との関係性を考えながらそれぞれのレイヤーに適切な穴を開けてやることで、壁の中すらも人やもののための空間としてデザインすることができます。


伊達の家/青木弘司(aaoaa.co.jp)

間の門/五十嵐淳(jun-igarashi.jp)
まとめ
私たちは普段、机なら天板、建物なら壁や床など、実際には厚みや中身がある境界を一枚の面として認識しています。境界に穴を開け、普段は意識することのないその厚みや中身の部分をデザインすることで、こちら側と向こう側という単純な図式ではありえなかった形で、その人の生活に応えるその人だけの空間を手に入れることができるのです。

オーバールック・ホテルのドア/ゴーストファニチャー
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