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國江家のキッチン

 

親子のためのダイニングキッチン。

クライアントは、子供が調理スペースに侵入しにくくすること、家電や食器の収納を増やすことを望んでいた。

そこで、既存のテーブルを延長するようにカウンターをつくり、リビングから調理スペースまでの経路を伸ばしつつ、その下を収納で埋めて子供の侵入を防いだ。

カウンター下の収納だけでは足りなかったので、背の高い棚を置いても圧迫感のない引戸の手前も収納とした。

全体を一つの大きな家具としてつくるのではなく、具体的な使い方や隣り合うモノに合わせ、部分ごとに形・色・素材を使い分けることで、家族の生活に寄り添う解像度の高さになった。

 

 

 

 

 

コラム:家具における2つの自由さ

 

ゴーストが設計する家具は、「後から手を加えられること」や「引越し先でも使えること」など、別の時間・別の場所を意識するものが多くあります。

このように自由な使い方ができるフレキシブルな家具をつくろうとすると、使用する部材やジョイントは、設計初期の段階からある程度制限されることになります。

その結果できた家具は、同じ部材の反復で構成されるなど、シンプルで分かりやすい見た目になることが多くなります。

一方、今回の設計では、アイデアを制限するようなコンセプトを最初に設定せず、クライアントとの打ち合わせを繰り返しながら、今・ここで美しく使いやすい家具を、自然なプロセスの中で設計しました。

そうして完成した家具は、部屋によく馴染み、使い勝手も良さそうです。

私は何より、自然なスタディの流れで生まれたこの不思議な見た目が気に入っています。

一元的なコンセプトの存在を感じさせず、捉えどころのない解釈の自由さ、何をどこに置いても許されそうな寛容さがあります。

私は今回の設計を通して、これまで意識的にフレキシブルな家具を設計することで失われていた、また別の自由さの存在に気づきました。

どちらが重要という話ではありませんし、また、どちらか一方しか選べないということもないはずです。

時間や場所を選ばない自由さと、その時その場所で使う人の感情を限定しない自由さ、その両方をバランスよく兼ね備えたものをつくってみたいと思いました。(中村)