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タキプラザのインテリア

 

 

東京工業大学の大岡山キャンパスに隈研吾氏が設計した、学生のための国際交流施設「タキプラザ」の2階において、フロアコンセプトの空間化と什器の選定を行いました。

 

・大机を中心としたレイアウト 

今回考えたことは、大きく分けて2つあります。

1つ目は、3つの大机を中心としたレイアウトです。

タキプラザの運営に関わる学生団体「タキプラザ・ガーデナー」が設定したのは、“学生が手を加えながら使える自由な場所”というコンセプトでした。

場所の使い方には様々な自由さがありますが、ここで私たちが選択したのは、多様な活動を受け入れるジェネラルな大机が3つあることで、全体のレイアウトをどれだけ変えても、空間の基本的な質は保たれるという自由さです。

その時その時の使い方に応じた全体のレイアウトを、3つの大机のレイアウトから考えられるようになっています。

 

・無理のないカラースキーム

2つ目の特徴は、什器のカラースキームです。

施設のオープン直後から、学生や大学の職員たちによって次々に新しい什器が導入されることを考えると、私たちが同じ品番や同じテイストで揃えておくことは、オープン時に美しい写真が撮れること以外にメリットがないように感じました。

むしろ、あらかじめ雑然とした風景からスタートし、それがいかに美しく保たれるかを考えることにしました。

そこで考えたのが、メーカーを横断してテイストの違う什器を積極的に選び、どんな品番にも用意されていることが多いグレー系・ブラウン系を基本色としつつ、差し色として原色を使うというカラースキームです。

新しい什器を導入する際は、その大きさや置く場所とのバランスを考えて、無難に行くならグレー系・ブラウン系のものを、アクセントにしたければ原色のものを選べばいいわけです。

“空間をつくる”ということを、モノとモノの関係性を紡ぐことだと定義すると、新しく導入する什器の色を既存の什器と“馴染ませる”あるいは“映えさせる”という行為は、使い手にとって最も簡単に空間をつくる手法だと思います。

この無理のない分かりやすいカラースキームが、未来の使い手にとって、風景を美しく保ちながら更新していくための指標になればと思います。

 

・未来に対してどこまで責任を取るか

この仕事を請け負った時、私たちは1年後に卒業を控えていました。

施設がオープンする頃には運営に関われないという立場で、空間の使われ方にどこまで責任を取り、どこからは取らないかを誠実に考え抜くことを心掛けました(それは同時に、使い手をどこまで信じられるかという葛藤でもありました)。

その結果、大机を中心としたレイアウトと、無理のないカラースキームという、初めての大きな仕事の割にはささやかに感じられる工夫に落ち着きました。

自分たちが残していった場所が、今は顔の見えない未来の使い手によってどのように使い熟されていくのか、緊張しています。